15歳の僕と、28歳の僕の往復書簡
中学生のころ、僕はいつも鬱屈していた。
そんな15歳の僕が、将来の自分に向けて書いた手紙がある。
28歳の僕も、15歳の僕に返信を書いてみようと思う。
とても内向きな内容になるけれど、いつか僕が死んだとき、何を考えていたかを推し量る材料になるだろうから。
15歳の僕から、将来の僕へ
将来の自分へ
僕は何をしていますか?
今、僕は15歳の中学3年生です。こんな手紙書いたこと忘れてない?(笑)
僕はちょっと今つらくて、こんな手紙を書いています。もしかしたら恥ずかしいかもしれないけど、自分がどんなことを考えていたか、残しておきたいと思いました。
一番つらいのは叶わない想いです。
僕は〇〇くんが好きです。覚えているよね?
〇〇くんのどこが好きなのかわからないけど、ずっと目で追っている自分がいて、これが「好き」なのかなって思った。
覚えてるかわからないけど、部活の遠征のとき、一緒の布団で寝たときはドキドキした。文化祭の準備のとき、急に手をつながれたときもドキドキした。
でも、部活の着替えのとき、裸をつい見ちゃうし、それをオカズにしちゃったりして、自分が嫌いになることもある。この気持ちが好きなんじゃなくて、性欲だけなのかなと思ったりもする。そして自己嫌悪しちゃうこともある。
それに一番嫌なのは、僕が〇〇くんの一番にはなれないということ。
恋人になりたくないと言ったらウソになるけど、せめて一番仲のいい友達になりたかった。
この前、〇〇くんが△△と付き合ってることを知った。
僕に話してくれなかったということは、その程度の関係だということだと思った。僕より仲いい人いっぱいいるだろうし、しょうがないとはわかっているけど、つらい。
あげくの果てに勝手に避けちゃうし、自分が何をしたいのかわからなくなってます。
きっと僕はずっと誰かの一番にはなれないんじゃないかなと思っています。
今だって、友達だと胸を張って言えるのは□□と××だけです。今でも仲良くしているのかな?しているといいな。
でも□□と××にとっても僕は一番の友達じゃないと思うし、やっぱり一番にはなれないんだろうなと思ってる。
自分のことを話すのが怖い。変だと思われたくないし、心を開かないと仲良くなれないとわかっているけど、やっぱり怖い。家族にだって話したくない。
将来の僕はどうですか?
自分のことを話せる友達とかいますか?
あと2ヶ月で高校受験です。それも怖いです。
本当に死にたいです。でも◇◇のこともあったし、自殺は絶対にしないと思う。
将来どうなっているのかな。不安です。
僕は今、臨床心理士になりたいと思ってるけど、どうですか?
◇◇が亡くなってしまって、どうして被服室のあの時、もっと話を聞いてあげなかったんだろうって、ずっと思っています。もうこれ以上誰にも死んでほしくないです。
僕は誰かの一番にはなれないかもしれないけど、誰かのためになるようなことをしていたらいいなと思っています。
なんか文章がグチャグチャになってしまいました。
これを読んで、懐かしいとか思うのかな?
中三の僕はこんなことを考えています。
どんな人生を歩んでますか?生きていますか?つらいけど、この手紙を読むのを楽しみにとりあえず頑張ります。
28歳の僕から、15歳の僕へ
15歳の自分へ
手紙、ありがとう。
この手紙を書いてからもう13年も経ったのか、と思うと時の流れの速さを思わざるを得ません。
正直何を書いたのか全く覚えていなかったし、当時の自分が何を考えていたのかも覚えていなかったです。
でも、読んでいるうちに懐かしいな、と思いました。こういうことで悩んでいたんだね。
〇〇くんのことが好きだった気持ち、覚えているよ。
あれが初恋で、その後好きになった人も同じようなタイプでした。
今思えば、〇〇くんが僕の好きになるタイプど真ん中だったのかもね。
彼との間にどういうエピソードがあったか、あまり覚えていなかったので、手紙を読んで「そんなこともあったか」と懐かしい気持ちが大きいです。
今でも〇〇くんとはたまに飲みに行くよ。
28歳の〇〇くんがどうなっているか、気になるかもしれないけれど教えてあげません。
でも一つ言えるのは、〇〇くんを好きになった君は見る目あるよ。それだけ魅力的な人になっているということだけ言っておきます。
自信をもって、彼を好きでいてください。
でも恋愛は難しいよね。
「好き」という言葉は蔓延っているけれど、具体的にどんな気持ちのことを指すのか判断に迷うよね。
それで大丈夫だよ。
結局、誰かと比べることができないのだから、自分の感じた「好き」という気持ちを信じるしかないし、それを感じる経験を今君はしています。
これも今だから言えるのかもしれないけれど、15歳の今、君が悩んでいる物事は大事なことだったと思います。
大いに悩め!
そうそう、今、僕は付き合って7年になる彼氏がいます。
誰かの一番にはなれないかも、と悩んでいると思うけれど、そんなことはありませんでした。
こんな僕でも、誰かにとって欠くことはできない存在になれました。まあもしかしたらそう思っているのは僕だけなのかもしれないけどね。
彼には日常のどんな些細なことでも話したいと思うし、話してほしいと思う、そんな存在です。
相変わらず友達はさっぱりできないけどね。
あ、□□と××とは今は疎遠になってしまいました。ごめんね。
あと、残念ながら臨床心理士にはなりませんでした。
◇◇のことは大きな出来事だったと思う。
もっとちゃんと腰を据えて話を聞いてあげていれば、自ら命を絶つこともなかったんじゃないか、ってその後も何度も思いました。
でも、それはエゴです。君がすべきなのは後悔でも責任を感じることでもなくて、一日一日を大切に生きることです。
遺された人の気持ち、知っているでしょう?
この13年、何度も死にたいと思ったけれど、君が思ったように彼女のことがあったから自殺を考えることはありませんでした。
僕は◇◇のことを忘れずに生きていくことが供養だと考えています。
一度、逃げずに正面から向き合い、考えてみることをおすすめします。
今は中学校という限定的な空間に君はいるけれど、これから、高校に行き、大学に行き、社会にも出て、君の周りはどんどん広がっていきます。
視野も広がるよ。いろいろな角度から考えるようにもなります。
考えることは大事なことです。
繰り返すようだけど、今の君が考えていることもとても大事なことです。
自分の考えていることを残そうと思ったのはとてもいいアイデアと思います。
僕もまさに今、そんな感じでブログなんか書いていたりします。
大いに考え、大いに悩んでください。
最近、人生ってそれの連続だなと思うようになりました。
28歳の僕もいろいろ悩みは尽きませんが、必死に藻掻いています。
目下、おじさんになると説教臭くなるのが悩みです。
この返信もどれだけ悩んだことか……
君はこれからいろいろな経験をします。
楽しいこと、辛いこと、悲しいこと、幸せなこと、いろいろあります。
ぜひ今を楽しんでください。一日一日を大切に生きてください。
お互い、がんばりましょう。