信号が人を左右する

とあるゲイの雑記です。何も遺せないので、せめて思ったことくらいは

工場の立地についての理論

こんにちは。うれたんです。

工場見学が好きです。モノづくりの現場を見るのが好きです。プロダクトが出来上がっていく過程や、経験による集合知から生まれる効率化を見るのが好きです。

大学のゼミも「ものづくり」関連の理論を結構勉強した*1し、親はエンジニアだし、結構工場とか製造業は身近です。

でも、なんでここに工場を設置したのか?が良くわからなかったりするので勉強です。

ルフレッド・ウェーバー*2の工業立地論の説明です。

 

 

 

ウェーバーの目的意識

工業立地現象に対して空間的視点からアプローチする場合、どの時代のどこにいかなる工業が立地しているかを明らかにするタイプと、その工業がなぜそのように立地しているかを明らかにするタイプの2つが考えられます。

後者によるアプローチ、つまり工業立地の理論的説明の代表例がアルフレッド・ウェーバーの工業立地論です。

ウェーバーの目的意識として、大々的な工業や人の移動が起こり始めた当時(1900年代初期)の社会において、工業立地に関する一般理論を打ち立てることでその謎を解き明かしたいというものがありました。

現実世界

ウェーバーが活躍していた今から100年ほど前は、それまでなかったほどの大々的な経済的勢力の場所的推移や、資本や人の移動が起きました。

研究者による現実世界のイメージ

ウェーバーはこれらの移動には合理性があり、経済立地に関する法則が全く存在しないと考えることはできないと考えました。それに関して、工業の立地配分は常に今日の人口の大集中の原因ではないにしろ、「実態」をなすものであると考えています。

ウェーバーは『工業立地論』において生産の分野に限局していますが、それは生産を抜き出し、その立地を解明するということは、大部分において他の分野(流通・消費)の運動をも解明することとなるとも考え、またチューネンによる農業立地論があるのに対し工業においてはこれに比肩するものがなかったためです。

 

仮説の設定

ウェーバー立地論について、原料の性質と輸送費の構造、それに労働力と集積の経済に注目しました。また、当時は現在ほど交通が発達しておらず、輸送費が工業立地を左右する割合が大きいと考えました。

下図は原料の種類の違いに応じた最適立地を示した図です。

 

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*3

 

ウェーバーは原料、製品の輸送費が最小になる地点を最適立地点であるとしましたが、低廉な労働力と集積の経済はこれの修正要因として働くと考えました。

輸送費最小地点が定まっていても、労働費に地域差があった場合、総生産費用が最小になる地点を改めて選ぶインセンティブが働き、また集積の経済においては多くの企業がある地点に立地していれば様々なメリットを享受することができ、改めて考慮し最適地点を選ぶはずだからです。

 

データの収集と検証

ウェーバーはこの理論を「純理」、すなわち特別の経済秩序と関係なく一般的に成立するものだとしています。

この純理に対する実証的理論としては、1861年以後のドイツの工業立地の分析と、現代資本主義国一般の人口集積に関し一般に知られる他の若干の事実を分析するということを企図しました。

 

法則と理論の構築

以上により、ウェーバーは「工業立地論」を構築しました。

内容としては先でも述べた通り、工業の立地は原料と製品の輸送費が最小になる地点が最適立地点であり、低廉な労働力と集積の経済はこれの修正要因として働くというものでした。

しかし、ウェーバー自身はそれで解決していない問題が残っているとしています。それは、この理論は生産のすべての部分を規定するとしても、なお生産の分布は様々に異なる可能性があるのではないかということでした。また、それは事実その通りであるとも述べています。

それは労働供給地の分布は特定の経済秩序に影響されて決定されるものであり、これは実証的理論で解明されるべきもので純理の枠内では所与にはならない、ここに限界があるということでした。

 

感想

4冊も読んだのにぶっちゃけよくわかってない部分とか理解できていない部分もあったりしますが、エッセンスくらいは学べた気がします。 100年前の話ですが、現代にも通じるところがあるようにも思います。

今後、工場見学に行った際、あるいはニュース等で工場の話を見た際には、立地にも注目できる素地はできたんじゃないでしょうか。僕も上司に「なあ、工場の立地ってさ―」ときかれたら「ウェーバー……」と颯爽と答えていきたい所存です。

 

 

参考文献

・アルフレッド・ウェーバー ;訳 篠原泰三[1986]『工業立地論大明堂

・伊藤久秋[1976]『ウェーバー工業立地論入門』大明堂

・林上[2013]『都市と経済の地理学』原書房

・山田浩之[2002]『地域経済学入門』有斐閣

 

*1:藤本先生の製品アーキテクチャ理論など。モジュール・インテグラルの議論はビジネスを考える上で非常に役立ってます。当時小川先生のオープンクローズ戦略とのシナジーを結構議論した記憶があります。知財戦略は必須だと僕は思っています。また、ものづくりの流れが『設計情報の転写』という議論には心底感銘を受けました

*2:プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で有名なマックス・ウェーバーの弟さんです

*3:林[2013]より、筆者作成。 

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